メトロシティには数多くのキッチンカーが行き来しているが、その中でもいちだん年季の入ったキッチンカーがある。そのキッチンカーは老人が切り盛りしていた。
老人はドイツ出身で、子どもの頃にこちらに引っ越してきたという。料理が趣味で、母親からよくドイツ料理を教わっては、自分でよく作っていた。
その家庭料理を誰かにふるまいたい、と彼は50年以上前にこの街でキッチンカーを始めた。
子どもたちから街のごろつきまで、自分の料理を誰かがおいしそうに食べている様子を見るのが何より嬉しかった。
ただ、最近はピザやタコス、ハンバーガーといったもっと手軽なファストフードが好まれるようになり、現在は昔ほどの客足はなかった。それにもう歳なので、とそろそろ店をやめるつもりでいた。
ある夕方、休憩がてら大通りから離れたところに車を停めていたところ、青年が辺りを見回していた。土地勘があまりない、最近越してきたばかりの人なのだろう。
ガタイのいい身体にそれでもオーバーサイズの服、右側だけ長く伸ばした前髪が印象的だった。
「おう、どうした坊主。道に迷ったのか」
「オレはガキじゃねえ……」
老人が呼びかけると、青年はイライラした顔でキッチンカーに近づいてきた。
「ははは。ワシにとっちゃ皆ガキみたいなもんよ」
「なあジジイ、この辺で飯食えるところは……あっ」
青年が視線を落とすと、手書きのメニューが目についた。メニューの名前にはドイツ語が添えられている。青年はメニューを興味深そうに見つめていたが、1つのメニューに目を留めた。
「ふーん…… カリーヴルスト1つくれ。あとパンも1つ」
「あいよ」
代金を受け取った老人は材料を手早く取り出して、調理を始めた。
「夕飯にしてはあっさりしてるんじゃないのか?育ち盛りだろうに。サービスだ、大盛りにしてやろう」
「ヘッ、これ以上育ってたまるか!」
そう言いながらも、青年は調理する老人の手つきをじっと見ていた。
「……さっきはすまねえな、これキッチンカーだったのか」
「まあちょいとボロくなってきたしな。気づかなくてもしょうがない」
「たまに食いたくなんだよな、カリーヴルスト」
「そうか、そりゃよかった」
そう言いながら、老人は紙製の容器に料理を盛り付けて差し出した。大盛りだ。
青年は料理をそっと受け取ると、その場でガツガツと料理を頬張る。いい食べっぷりだ。
「……そういやお前さんの英語、ちょいとドイツ語訛りか?」
「はは、よく気づいたな」
「ワシも昔はドイツに住んでてな…… 越してきたのが昔なもんで訛りは抜けちまったが」
そんな感じで、2人は街角で取り留めもない話をした。
「……うまかったぜ。ありがとよ」
青年が空になった容器を渡しながら老人に言う。
「普段はあっちの大通りで店を出してる。来たくなったらまた来な」
老人は青年に手書きの地図を差し出した。それを受け取って去っていく青年に、老人は微笑みながら手を振った。
さっきの青年を見ていると、昔カリーヴルストを美味しそうに食べていた子どもたちを思い出した。悪くない、もうちょっとだけ店を続けようか、と老人は思ったのであった。
老人はドイツ出身で、子どもの頃にこちらに引っ越してきたという。料理が趣味で、母親からよくドイツ料理を教わっては、自分でよく作っていた。
その家庭料理を誰かにふるまいたい、と彼は50年以上前にこの街でキッチンカーを始めた。
子どもたちから街のごろつきまで、自分の料理を誰かがおいしそうに食べている様子を見るのが何より嬉しかった。
ただ、最近はピザやタコス、ハンバーガーといったもっと手軽なファストフードが好まれるようになり、現在は昔ほどの客足はなかった。それにもう歳なので、とそろそろ店をやめるつもりでいた。
ある夕方、休憩がてら大通りから離れたところに車を停めていたところ、青年が辺りを見回していた。土地勘があまりない、最近越してきたばかりの人なのだろう。
ガタイのいい身体にそれでもオーバーサイズの服、右側だけ長く伸ばした前髪が印象的だった。
「おう、どうした坊主。道に迷ったのか」
「オレはガキじゃねえ……」
老人が呼びかけると、青年はイライラした顔でキッチンカーに近づいてきた。
「ははは。ワシにとっちゃ皆ガキみたいなもんよ」
「なあジジイ、この辺で飯食えるところは……あっ」
青年が視線を落とすと、手書きのメニューが目についた。メニューの名前にはドイツ語が添えられている。青年はメニューを興味深そうに見つめていたが、1つのメニューに目を留めた。
「ふーん…… カリーヴルスト1つくれ。あとパンも1つ」
「あいよ」
代金を受け取った老人は材料を手早く取り出して、調理を始めた。
「夕飯にしてはあっさりしてるんじゃないのか?育ち盛りだろうに。サービスだ、大盛りにしてやろう」
「ヘッ、これ以上育ってたまるか!」
そう言いながらも、青年は調理する老人の手つきをじっと見ていた。
「……さっきはすまねえな、これキッチンカーだったのか」
「まあちょいとボロくなってきたしな。気づかなくてもしょうがない」
「たまに食いたくなんだよな、カリーヴルスト」
「そうか、そりゃよかった」
そう言いながら、老人は紙製の容器に料理を盛り付けて差し出した。大盛りだ。
青年は料理をそっと受け取ると、その場でガツガツと料理を頬張る。いい食べっぷりだ。
「……そういやお前さんの英語、ちょいとドイツ語訛りか?」
「はは、よく気づいたな」
「ワシも昔はドイツに住んでてな…… 越してきたのが昔なもんで訛りは抜けちまったが」
そんな感じで、2人は街角で取り留めもない話をした。
「……うまかったぜ。ありがとよ」
青年が空になった容器を渡しながら老人に言う。
「普段はあっちの大通りで店を出してる。来たくなったらまた来な」
老人は青年に手書きの地図を差し出した。それを受け取って去っていく青年に、老人は微笑みながら手を振った。
さっきの青年を見ていると、昔カリーヴルストを美味しそうに食べていた子どもたちを思い出した。悪くない、もうちょっとだけ店を続けようか、と老人は思ったのであった。