【小説】Just a Day Dream

夢小説っぽく見えるかもしれない。エドがバイソンと一緒にいて、まだ右メカクレヘアじゃなかった頃の話です。モブの少女視点。

2025-05-12 21:53:05
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「皆さんおはようございます。」
「おはようございます!」
席に着いた私たちは、いつも通り先生に朝の挨拶をする。ただ、どうやら今日はいつもと違うイベントがあるようだ。なんとなく先生の様子が違うのがわかる。

「今日は転入生を紹介するわ。入ってちょうだい」
ドアが開くと、先生よりも背が高い少年が姿を現した。少々癖毛気味の金髪で、白いパーカーを着ている。頬には大きなばんそうこうが貼られている。ケガでもしたのだろうか……
「さあ、ご挨拶して」
「……エド……バイソン」
大きな少年は、少しきまりの悪そうな感じで名前を名乗った。
「エドくん、よろしくね」
そう呼ばれたエドは先生をにらんだので、クラスにちょっぴりピリッとした空気が漂った。
「席について、好きなところでいいわよ」
そう言われると、エドは窓の近くの席に座った。

「さて、授業を始めましょう。最初は算数の時間。」

私はノートに文字を書きながら、時折窓際の席についた転入生――エドの様子を見ていた。エドは真面目にノートを取るでもなく、窓の外、飛行機が飛ぶ空をボーっと眺めていた。
とっても背が高くてガタイがいい、まるでハイスクールの子みたいだな……と思ったりする。ちょっと話してみたいなあと思ったりもしたが、さっき先生をにらんでいた様子を見ると少し不安だな。

昼休み、ぶらっと運動場に出てみると、外で遊んでいるクラスメイトを遠目に見ながら日陰で退屈そうにしているエドを見つけた。ちょっと勇気を出して話しかけてみようか。
「ねえ……遊ばないの?バスケットボールとか……」
「……別にいい」
エドは目も合わせずに言う。
「背が高いし、きっとたくさん得点とれちゃうもんね」
「……」
そこからエドは一言も発さなかったし、視線も合わせなかった。私はしばらく様子を眺めた後、その場を後にした。

次の朝、教室に来ると、クラスメイトの男の子たちがうわさ話をしていた。
「……バイソン?」
「父さんがさ、昔マイク・バイソンって名前のすんげー怖いボクサーがいたって言ってたんだ」
「転入生のエドって奴の苗字もバイソン、だったよな。すっげーでかいし、顔もケガしてたし、先生にらんでたし、きっと普通の奴じゃねえ」
「怖ぇ~。あんなデカブツに殴られたらケガしちゃうかも!」
「怒らせたら絶対ヤバいぜ」
「……おいアイツ来たぞ」
ドアを開いて、しぶしぶといった様子でエドが入ってきた。昨日と同じ窓際の席が空いているのを見ると、エドはそこに座った。クラスメイトの少年たちは、そこからちょっと遠い位置の席ばかりを選んでいた。なんだか嫌だなあ。

エドは読み書きの授業だけはちょっと真面目に受けている様子で、他の時は大体上の空といった感じ。たまに古いプリントで紙飛行機を折ったりしている。
そして昼休みになるとエドは昨日と同じように日陰でぽつんと座っていて、案の定バスケットボールをしているクラスメイトたちも誘いに来ない。

「先生!大変だ!転入生が!」
ある日の放課後、ちょっと騒ぎが起こっていた。転入生……エドのことだろうか?私はこっそり様子を見に行った。学校の裏のゴミ捨て場には、ショッキングな光景が広がっていた。
殴り飛ばされた少年と、拳を構えたまま青ざめて呆然としているエド。
殴り飛ばされた方は、派手に鼻血を垂らして、服が血でひどく汚れていた。殴り飛ばされた衝撃で、ゴミ箱が複数倒れている。
「は、あ……」
エドは逃げる様子はなく、焦点の定まらない目でその光景を見つめていた。

「なんてことするの、エド!」
先生たちが集まって来た。遅れて駆けつけたのは、殴り飛ばされた少年のほうの母親だろうか。
「……」
エドは黙っている。
「謝りなさい」
「……こ、コイツが先に!!」
「エドくん、落ち着いて」
先生がなんとかなだめようとする。
「オレは好きでこんな身体になったんじゃねえ!!」
エドは先生の胸倉をつかんだ。
「おい」
人だかりの中に、エドより一回り大きな男が割り入ってきた。あれがエドの父親?
「こんなところで暴力をふるうんじゃねえ。面倒なことになるだろうが……って、もうなってるな」
「バイソン!!アイツが!!」
エドは鼻血を垂らしている少年を指さした。幸い意識はあるようで、他の先生に介抱されながら救急車に運ばれていった。
「もういい。帰るぞ」
「バイソン!!」
その様子を見て、居合わせた先生たちも皆唖然としていた。後から知ったが、エドを迎えに来たのは、「猛獣」と名高い荒くれボクサー、マイク・バイソンその人だったからだ。


あの騒ぎがあってから、エドはぱったりと学校に来なくなった。それはそうだろうな、とも思うけれど、まるであの日の出来事が変な夢だったかのように、先生を含めて誰も話題にしなくなった。

放課後、皆が荷物を持って外に出て行ったあと、私はエドがよく座っていた席のあたりを見に行った。
そこには、ビリヤードの球のキーホルダーが落ちていた。なんとなく、「忘れ物かな」と思いながら拾った。ビリヤードの球らしく、ちょっと重みがあるキーホルダーだ。長いこと持ち歩かれていたのだということがうかがえた。
なんとなく、届けてあげたほうがいいんじゃないかという気がしてきた。

……でも、どうやって?

よくわからないまま、なんとなく歩いていたら、路地裏に入ってしまった。このままでは帰りのバスの時間にも遅れてしまうのに。先生やお母さんに、一人で路地に入ってはいけませんよと言われていたっけ。心臓が高鳴る。
気が付くと、大きなバックパックやらカバンを持ったエドと、バイソンと呼ばれた大きな男が少し先で話をしていた。
見つけた、早く渡さなきゃと思ってまごまごしていたら、こちらを向いたエドと目が合った。
「……こんなところに来んなよ」
エドは大股で歩いてこちらに近づいてくる。私の少し前で立ち止まり、私が手から下げていたキーホルダーを見つけた。
「あった」
エドは私の手からそっと、薄いガラス板を触るかのようにキーホルダーを受け取った。
「……ありがとよ」
ほんのちょっとだけ、エドの口角が上がったように見えた。

しばらくして顔を上げると、もう目の前には誰もいなくなっていた。
私もまた、夢を見せられていたような感覚になりながら、走って今来た道を戻っていった。

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