【小説】小さな花を

エドがある廃研究所を探索する話です。サイコパワーを持つ人が死亡した時の独自設定があるので注意。

2025-08-04 17:47:49
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エドはある山奥に、シャドルーの廃棄された研究所を発見した。どうやらここでひどい爆発があったようで、建屋内は瓦礫が飛び散りひどい荒れ様だった。しかし様子を見るに、爆発からはあまり時間が経っていないらしい。研究員が証拠隠滅のために爆破したのか……?都合が悪くなったら消し去るんだ。非人道的にも程がある。

待てよ、とエドは立ち止まった。建物のどこかからサイコパワーの気配を感じる。ここにはまだ誰かいる。

気配をたどって地下に入ると、個室のような場所や、手術室、実験室が目に入る。どれも爆風で原型をとどめておらず、人の気配はない。地上から見える範囲より明らかに大規模な実験施設だったようだ。サイコパワーの気配は周囲にわずかに残っているが、そこにいた人……実験体が逃げ延びたような様子はない。皆爆発から逃げられなかったのか。「クソ……」と呟く。資料室にも役に立ちそうな物は何もなかった。皆焼けてしまったらしい。

やがて、ガラス張りだったと思われる部屋の中央に、実験体の少女が1人だけうずくまっているのを見つけた。エドは一安心して微笑んだ。
「助けに来た。ひとりぼっちで、寂しかっただろ」とエドはそっと声をかける。少女は虚な目でこちらを見つめる。
「だれも、しんじない」
「……」
仕方のないことだ。これだけ過酷な環境に置かれれば、疑心暗鬼にもなるだろう。
「みんな……うそつきだ……」
じきに、尋常ではなく強い憎悪の感情が、彼女のサイコパワーを増幅させる。
「落ち着け。オレは仲間だ。」
「ゆるさない、ゆるさない……!」
エドは悪い予感がしてとっさに距離をとる。少女を中心に、サイコパワーが溢れ出し、爆風のように吹き荒れる。洗脳でもされたのか?いや違う。これは彼女自身の意思だ。誰彼構わず、全てを終わりにしたいという本人の思いだ。
「みんな、おわってしまえばいいんだ!」
エドは気づいてしまった。彼女自身が、暴走するサイコパワーでこの研究所にいた研究員も、実験体すらもすべて手にかけてしまったことに。

地面が震えて、彼女を中心に溢れ出したサイコパワーが、人の影のような形を生み出す。まるで未練を残した幽霊のように。彼らは皆子どものような形をしていた。彼女が、ここにいた実験体たちのサイコパワーを吸収したのか。地上からもわかる異様に強い残滓の気配の正体は、目の前の少女が複数人分のサイコパワーを抱え込んだことによるものだった。サイコパワーを吸収された実験体たちは、急な変化に耐えきれず命を落としたのだろう。

このままではまずい。外に放たれてしまえば、最悪の事態は免れない。彼女をなんとか落ち着かせなければ。エドは次々と襲い来る影を振り払い、少女に再び近づこうとする。
「だれも、わかっちゃくれない!わたしは、ひとりぼっちなんだ!」
「一人なんかじゃねえ!」
少女と影の猛攻が突然ぴたりと止んだ。少女はエドをじっと見つめる。
「出口の見えない暗闇。周りの大人は誰も助けてくれない。逃げられない。オレもずっとそういう場所にいた」
「……ごめんなさい」
「そう、わたしと、おなじだったなんて」
足元から手のような影が染み出し、エドの足を掴もうとする。少女がエドからもサイコパワーを吸収するつもりだと勘付き、咄嗟に振り払う。そして、距離を一気に詰めたエドは、少女を抱きしめた。
「……」
しばらくそうしていると、足元の手の影が引いていった。背中を撫でながら、エドは静かに言い聞かせる。
「もう大丈夫だ」
「ああ、ああ……」
少女は泣き出してしまった。
「やっと、みつけてもらえた」
「おやすみ」
「ありがとう」

明らかに許容範囲を超えたサイコパワーを抱えた小さな身体は、立っているのも不思議なぐらいぼろぼろだったのは最初から明白だった。もう長くはもたないだろう。
微笑んだ少女は意識を失い、エドに体重を委ねると、身体が塵のようになり、飛散した。

「……」

その夜、エドはファルケに連絡を取った。
「研究所で、仲間を1人助けた」
「よかった。その子に怪我は?」
「いや、いい」
「どうして?」
「今度またここに来る。その時は、花を持って行くんだ」

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