王者か負け犬か -König oder Feigling-

エドのテーマ曲の話をします。

2025-12-03 00:00:00
☆この記事はmisskeyサーバー「ゲームすきー」で開催されている「サントラ紹介アドベントカレンダー」に参加している記事です。

初めましての人は初めまして。浅瀬シャロです。

今回は「Street Fighter 6 Original Soundtrack [Year 1]」より、「König oder Feigling」を紹介させてください。
販売リンクはこちら(ここ以外にも各種サブスクでも配信されています)

さて、まずは何も言わずに1度聴いてください。


本曲は「ストリートファイター6」の登場キャラクター、「エド」のテーマ曲となっております。
エドって誰?の話は昨年書いたこちらからどうぞ。

「スト6」唯一・テーマ曲に歌詞があるファイター

2025年11月3日時点で、「ストリートファイター6」にはファイターが28人実装されています。そして、この全員にそれぞれテーマ曲があり、試合中には両サイドのうちどちらか、またはステージ固有の楽曲が流れるのがデフォルト設定になっています。全員、出身国の音楽やファイターの趣味を反映した素敵な楽曲に仕上がっています。
しかし、その中でも、エドのテーマ曲が特別なのは、ファイターのテーマ曲の中で現時点唯一歌詞があること。エドは開発メンバーにとっても特別思い入れがあるキャラクターのようで、前作(ストV)では英語のラップでしたが、今回ついにドイツ語のラップをエドのテーマ曲として実装する夢が叶った旨もどこかのインタビューで語られていました。
エドに特別な思いを抱いているであろうことは、Year1のサウンドトラックのジャケ写でも、Year1-2 Fighters Edition(1年目と2年目のDLCがセットになったパック)のジャケ写でもエドがセンターになっていることからも伺えます。
今回は、そんなエドの内面を、本曲の歌詞を追いながら語っていこうと思います。

月の光に照らされる孤独なファイター

私がこの曲をざっと聞いて感じた印象としては、「夜眠れなくて、真夜中に起きだしてトレーニングに励んでいる青年」のイメージ。……あくまでメロディの印象です。太陽というよりは月のイメージの曲だな~と思いました。
最近のヒップホップシーンの流行りのことはよく知りませんが、エミネム(Eminem)などを彷彿とさせるメロディが印象的。(ちなみに私はEminemの楽曲なら” Venom”が好き。これ聴きながら夜道を歩くと最強な気分になれるので)
この後歌詞についても語りますが、エドを表現する公式楽曲として最強の楽曲だなと思いました。

自己矛盾に悩む青年

では、最初から歌詞を見ていきましょう。

僕は一人じゃない、でも孤独に感じる

この楽曲は、こんな歌いだしで始まります。

成功したいけど失敗を恐れてる

わかる。私も、負けるのが怖い。

この広く、暗い海をずっと泳ぎさまよっている

世界と戦ってるんじゃない、自分と戦っている

この2か所、すごくエドだなあって思います。エドは、サイコパワーの影響による自分の中の精神の不安定さと闘っているのです。その感覚は、きっと暗い海をさまようような感覚でしょう。

自分の中の闇に勝ち、王座を勝ち取る

戦いの前、心の中にちらりと顔を見せる不安な気持ち、魔が差すような気持ち。植え付けられたサイコパワーは、そんなわずかな隙につけ込んでくる。これは自分の中の戦い。エドは、精神が乗っ取られたときの「弱者は要らない」と見下し蔑まれるような、クソみたいな感覚と闘っている。

大口叩くより行動で示す

「理想ばかり語るヤツ」が嫌いなエドらしい一節です。理想を語るより、それを行動で示して見せろ、と。エドは何度も、きれいごとを語るだけの人間に裏切られてきたのでしょう。

誰でもいつかは死を前にする
だから恐怖に立ち向かわないといけないんだ!

いつかは死ぬなら、後悔しない死に方をしたい。自分の道を自分で歩く。エドは、あの日占い師の「このまま大人になっちゃうと君は君でなくなる」という忠告を聞いて、きっとそう決意したのです。

自分を奮い立たせる

次はまるで、対戦相手を前にして、心拍が上がって、アドレナリンがあふれていくことを表現しているかのように、曲調が変化します。

心の底で感じるパワー
そして心の底で感じる自分を引きずり下ろそうとする力

サイコパワーは自分の力。でも、その力は心の弱みに付け込んで、自分を引きずりおろそうとしてくる。

息を吸い、また吐き出し
もう後戻りはできない、前進あるのみ

だから、落ち着いて、目の前を見据えて、前に進み続けるしかない。

プレッシャーが高まる、肺が空気を催促してる
血と汗と涙が静かに月の光を反射してる

ここで再び「月」のワードが出てきました。この曲はやっぱり、太陽というよりは月のようなイメージの曲だなと思います。

つらい記憶を振り払って、自分が自分であるために

ちょっといいことが続くと、また嫌なことが起きる
君が挫けることをハイエナのように望んでいる連中がいるから

世界には、良い人ばかりではありません。残念ながら、人の失敗を笑い、心を踏みにじるような奴もいます。

でも1日たりとも彼らの人生を送りたくない
認めてなくても彼らは苦しんでいる
僕を笑うがいいさ、僕は夢を追っている

この人生はオレの人生。この道はオレの道。誰にだって邪魔される筋合いはないし、誰かの描いた通りの人生なんてまっぴらです。

ん?夢?ドリームコンボ?知らない言葉ですね。

僕はもう一度死んだ、人生はたまに最高に美しい

重い言葉です。エドは実験体ではありますが、キャミィと違ってクローン人間ではありません。きっと本来の親にあたる人物がいたはず。いつかまで、幸せな日常を送っていたはずなのです。生みの親の記憶も誕生日の記憶も消え、エドという名前は実験施設で名づけられた。そこでまさしく、あの日の幼い少年は死んだ。
それでもエドは、バイソンと出会い、別れ、仲間と出会い……人生はめまぐるしく進んでいくのです。

「あいつは本当にダサいな」と言われる、そうさ、僕より美しく、偉大で、裕福な奴はいる
でも「僕であること」で僕をうわまわるものはいない!

ここテストに出ますよ!!
確かに、別の尺度で測ればオレより優れているヤツはたくさんいる。でも、オレがオレであることを上回れるヤツは存在しない。エドは、自分がエドという個であるということにおいて、誰にだって負けないのです。
私は、エドのそんな美学に惹かれたのかもしれません。

あの日の弱気な実験体はもういない

内気な少年だった、研究所のネズミと呼ばれた
どこにも居場所がない。チケットを持っていない乗員のように

この歌詞は、まさにエドを表現する個人的にお気に入りの歌詞です。バイソンに出会う前の幼いエドは、ただただ実験を行う人々に従い、怯え震えるしかなかった。
きっと、身体だけ急成長したエドは、同年代の子どもの中に放り込まれても、見た目が同じぐらいの若者たちの中に放り込まれても、どちらにもなりきれないため居場所がないでしょう。

どの心にも王と弱虫が潜んでる
どっちになるかは自分が決める、ライオンか小さい子ブタか

ここで楽曲のタイトル回収です。自分の人生は自分が決めるのです。
当然エドは王者であることを選びます。完全勝利が好きというプロフィールにもつながってきますね。でも、生まれてこの方完全勝利しか味わっていない人生であれば、きっとこの二択が存在することすら知らないでしょう。負けの苦しみを知っているから、この言葉が出てくる。
エド、良いですよ。完全勝利が好きというプロフィールからハードルが高いように感じますが、私たちだって敗北を経験したっていい。人はそうやって強くなっていくのですから。(この記事が公開されたころにはさらにナーフされて使いづらいキャラクターになっているかもわかりませんが)

トラウマとはもうお別れ、昔君たちは僕を貶したけど
もう怒ってないよ、君たちを許す
でもバトルの時だけは君たちをひどく泣かせてしまうよ
僕の言葉が刀のように相手を突き刺す

この歌詞を読むと、「ストV」でエドがベガに勝利したときのセリフと、「スト6」でエドがベガに勝利したときのセリフの双方を思い出します。
V: てめぇ!お前だけは許さねェ!今すぐ俺の前から消えろォ!
6: テメェにはもう、付き合いきれねえ!大人しく、くたばってろ!
ぱっと見は同じような言葉に聞こえますが、「V」の時は憎悪に呑まれた不愉快な気持ち、「6」の時もまたベガのことは許せないけれど、「V」の頃と比べるとなんだか吹っ切れたような感情が見て取れます。(まあ「6」のベガは記憶を喪失しているのもありますが……)

これは昔の僕へのメッセージ
今君は未来を恐れているね
いろいろ傷つくこともされるだろう
でも奴らの弱い光はもうじき消える

エドは、かつての自分自身のことを思い返します。繰り返される実験に絶望し、未来に恐れて震えていた小さな少年のこと。子どもは大人に逆らえない。それでも、バイソンと出会い、外の世界を知り、自分で自分の道を歩む自由な道を選択した。解放の流浪者となった。

今だって怖いさ、失敗を恐れて動けないときだってある
だから長く考えずに行動に移る
そうやって成長できるから
目の前の壁をぶち壊して戦いに挑む!

プレイヤーである我々だって同じ。負けに怯えていたら成長もない。
だから、とりあえず行動してみる。人は負けを繰り返して、痛みを抱えながら成長していく。自分の決断で道を踏みしめるエドからの、熱いメッセージだなと思いました。

おわりに

長々と記事を読んでくださりありがとうございました。
この記事を書くために、改めて歌詞(日本語訳)を書き写して読み直してみると、やはりエドのテーマ曲としてこの曲は至高であるということが改めて分かったような気がします。

個人的にはワールドツアー2部とかスト6版ゼネラルストーリーみたいなのが今後実装されて、エドが主要キャラとして出てくるのを期待しているのですが……ワンチャンありませんかね?

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