【小説】記憶は無いが、時間はまだ有る

記憶を失った元審神者と、彼女の近侍だった人間無骨の話。平たく言うとむこさにです。

2026-06-06 00:00:00
文字サイズ
文字組
フォントゴシック体明朝体

「ウラァ!」
現在に話を戻そう。人間無骨は、再び有海に襲い掛かろうと現れた時間遡行軍の群れと戦っていた。敵たちの攻撃を受け流しながら、1体ずつ斬る。
「其処ッ」
足に絡みつこうとする敵を蹴り飛ばし、槍の先端を突き刺す。
「手応えが無い。次は銃の使用を申請すルか……」

あらかた追い払ったか。敵の反応がなくなったのを確認した人間無骨は、槍をしまい、表通りに出る。人間無骨は、古道具屋の店頭で雑貨の品出しをしている有海を見つけた。
「主人、何をしていル」
「人間無骨もお疲れ様。お手伝いだよ」
「手伝い、と……」
有海はちょうど、茶碗をきれいにしているところだった。
「其レは茶器か?」
「うん。この間自分のコレクションを売っていったお客さんがいたらしくて、茶器がたくさんあるの」
「ム……」
人間無骨は有海の手から棚に並べられる茶器を見つめていた。
「棚にある分は手に取って見ていいよ」
人間無骨は、そっと茶碗の一つを手に取った。
「うム、此レはなかなかの品」
「お目が高いね。どれも結構いい品なんだって。おじいちゃんも言ってた」
「『おじいちゃん』?此処は祖父の店なのか」
「違うよ。でも私が小さいときからよく来てた店で、本当のおじいちゃんみたいに優しくしてもらってたから」
「そうか」
人間無骨は再び手元の茶碗に目を落とす。
「道具、とりわけ茶器は、表情が豊かで雄弁だと思う」
人間無骨は茶器をしみじみと見つめる。
「そうだね」
「うム」

1 2 3 4 5 6 7

いいね!